かねてより大手企業で電気関係の開発を行い、豊富な経験を持っていた尾川裕司。株式会社ロジフルには2008年(平成20年)8月の設立時から携わり、現在は取締役開発部兼製造部部長を務めている尾川に、仕事に対する姿勢と製品への思いを聞いた。
技術と人間力
ある問題を抱えた企業から話が来たときのことだ。装置を充電するため、30センチメートルあるガラス球の本体からバッテリーを毎回取り出す必要があり、その作業にかかる時間と手間に困っているとのことであった。そこで尾川は、装置を解体せずに充電するシステムをその場で構想し提案。お客様に大変喜ばれ、すでに100台ほど納品している。現在は次のステップとして、充電をさらに長持ちさせるためにバッテリーの容量を拡充する開発の依頼が来ているという。このように、尾川はお客様の要望を即座に理解し、問題解決へ導く提案をする。お客様側の技術者と対面で会話しながら提案する際に重要なのは、引き出しの多さと、すぐさま対応する技術提案をすること。豊富な経験と高い技術、実績があるからこそ成せる業である。固定概念にとらわれない柔軟な発想は、既製のシステムでは解決できない問題を解決し、お客様を満足させる。そうして築かれた安心と信頼は、新たな依頼へと繋がっていくのだ。
同じ目標に向かって
会社設立から2〜3年が経ったころ、ゴムのメーカーから開発案件の依頼があり、尾川は「お互いに初めての装置となるが、共にチャレンジしていこう」と様々な提案を繰り返していた。そして長年にわたり走り続けた結果、ようやくお客様の要望を満たす装置を完成させることに成功。喜びを分かち合った企業とは、現在も付き合いが続いている。「お客様には非常に恵まれていると思います。上場企業を含め、長いお付き合いをさせてもらっているお客様がほとんどです」。
信頼関係を築くためには、技術や知識の他にも、丁寧なヒアリングとコミュニケーション能力が必要とされる。困難を極めることは承知の上で、困っているお客様に寄り添う姿勢、要望に応えるプロフェッショナルな仕事は、相手の心に響きいつまでも残り続ける。
BtoCからBtoBへ
以前は、コンシューマーにターゲットを絞り高級オーディオ装置を販売していた。販売価格は150万円と高額であったにもかかわらず、ハイエンドな音質が定年を迎えた団塊世代の心を掴み、当時の雑誌やインターネットでも話題になり、専門家からも高い評価を受けた。だが、品質を認められながらも、売り上げは伸び悩んでいった。本物志向の大人たちが第二の人生を楽しむ手段として需要が高まっていたが、世代が変わればお金をかける対象も変わるのだ。これを教訓に、個人向けではなく、企業とタッグを組んだ受託開発をするようになる。そして長年オーディオ製品に携わってきた技術者たちの高い技術と熱い思いによって、日本一だと感じる音を作り出すことに成功したのである。
技術者の誇り
尾川は、回路設計の経験から電源装置やオーディオ装置といった機器の構造を熟知している。そんな尾川や技術者たちの努力によって開発された高性能な装置を求め、より良い音を必要とする舞台やスタジオからの依頼が相次いでいる。「お客様の喜ぶことを追求し、性能や音質が良くなる電源を常に考えています」。さらに2020年には世界規模の話が入ってきた。新型コロナウイルスの影響で延期となったが、オリンピックにおける放送設備関連の引合いがきており、ロジフルの技術は日本の未来に欠かせないものとなっている。また、新たに上場企業から開発案件の依頼があり、契約もほとんど決まった状態である。誰よりも強いプロ意識を持つ尾川は、今後も会社のために力を尽くしていくだろう。
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