2020年10月1日付で、有限会社アイ・ティ・ビー不動産(設立年:1987年、従業員:9名、事業内容:アパート・戸建て・駐車場などの不動産管理と仲介)の代表取締役社長に着任した伊藤文昭。現在40代の伊藤は、アイ・ティ・ビー不動産で一番の若手だ。しかし、それまでは年齢以上に凝縮された人生を送ってきた。これまでの経歴や、今後の目標について話を聞いた。
大手企業を退職し、起業
2001年(平成13年)大学を卒業後、システムエンジニアとして国内大手SIベンダーに入社した伊藤。入社後は12年間、銀行に常駐していた。お客様の要望に応えることで仕事にやりがいを感じていたが、馴れ合いを感じて13年目に異動を希望。銀行を離れると、直接担当するお客様がいなくなり、仕事に対して疑問を抱くように。「誰かの役に立ち、それが自分にとっても意味のあるような仕事をしたい」。
そうして2015年、退社と同時に起業を決意する。何の伝手もない中、不動産業に将来性を感じていた伊藤は、免許がなくても起業できる駐車場のサブリース事業をスタート。だが、たった一人で起業し、共に働く仲間もいない。新規の訪問営業は、想像以上に苦しいものだった。
無視や拒絶は日常茶飯事。もちろん、自分を気に入って仕事を頼んでくれる人もいた。だが、辛いことの方が圧倒的に多く、とても続けられない状態になってしまう。それでも養わなければならない家族のために、アルバイトを三つ掛け持ちして必死に働いたのだった。
立て続けに起こった転機
妻に「起業する」と打ち明けた当初は驚かれたが、応援してくれるようになり、そして支えてくれた。伊藤がアルバイトをはじめてからは、「家計の足しになるように」とパートの仕事にも就くように。退職してからの数年間は苦労もあったが、家族と共に二人三脚で歩みを進めてきた。
そんなある日、父から「浜松で不動産の仕事をしないか」と声をかけられる。免許不要のサブリースではなく免許を持って不動産業界で働くためには、まずアルバイトとして株式会社ITBエンタープライズで勉強するよう勧められた。「父から話があった際、正直、嬉しい気持ちと、生きるために仕方がないと思う気持ちの半々でした」。この複雑な心境から、家も家族も東京に残したまま、浜松まで新幹線で通勤することにした。その後、2018年2月、正式に入社することが決定。浜松で働く意思を固めた伊藤は、東京の自宅を売却し、引越しの準備を進めた。
そうした中で、「静岡市にあるアイ・ティ・ビー不動産の代表取締役社長になってほしい」と声がかかったのである。
信頼関係があってこそ
アイ・ティ・ビー不動産は、長きにわたり静岡市に根を張ってきた企業。管理会社であることから、不動産オーナーのもとへ挨拶に伺った際、アイ・ティ・ビー不動産がどれほど素晴らしい会社であるかを肌で感じた。
不動産オーナーは伊藤が訪れると快く招き入れ、「信頼しています」と言葉をかけてくれたのだ。「その一言は、これまで社員が積み上げてきた、地域との信頼関係そのものだと思ったのです」。
かつて自身が起業した際には、訪問営業の厳しさ、ゼロから仕事を作り出すことの難しさを経験してきた。だからこそ、不動産オーナーの対応や、目の前に解決すべき問題・課題といった「仕事」がある状況が、どれほどありがたいことであるかを痛感。その上、今は社員という仲間もいる。同じ目的を持って一緒に頑張れる環境には、心から感謝しているという。
グループの皆と一緒に
創立30年以上の歴史があるアイ・ティ・ビー不動産は、イトーグループから離れ、独立して仕事を進めてきた。しかし、伊藤が代表取締役社長に着任したことで、改めてグループ会社となったのである。
イトーグループとなったからには、お互いの仕事をもっとよく知り、グループ同士で支え合っていかなければならない。「皆が前向きに働けるような雰囲気の中で、地域の人々に感謝される仕事を一緒にやっていきたい」と語る。
代表取締役社長となった今、新た
な課題も見えてきた。近年、アイ・ティ・ビー不動産は徐々に管理戸数を減らしている。現状を打破するためには、新しい風を取り込めるような若い人材が欠かせない。もしイトーグループの中で、「静岡市で不動産業に挑戦したい」という強い気持ちを持った若手社員がいれば、共に歩んでいきたいと思っている。今回のグループ報のように、今後も一層幅広い人的交流を図っていこうと、期待に胸を躍らせているところだ。
躍進を続ける伊藤は、これからも会社の発展に貢献していくだろう。
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